園だより


「歩く」


自分の体を作りたいという欲求を持つ子どもは、その体の部分を常に動かそうとします。
そこでその動きを楽しく繰り返すことが出来るように準備したものが、「日常生活の練習」と呼ばれる活動です。
子どもが最初に始めるクラスでの活動は「歩く」です。
人や物にぶつからないで静かに歩く。
この制限のある動きをすることで自由に動いてよいクラスの中に秩序が生まれ、
また自分以外の人を大切に思う心も育っていきます。これは環境への配慮という意味を持ちます。
人や物にぶつからない等の制限ある動きを繰り返す事によって、
自分の体を心がコントロールして動かすということが出来るようになります。
これは平衡感覚を身に付け随意筋の発達を促すことにも繋がります。
新学期を迎え、自由にクラスの中に準備された活動活動を探す時、
ゆっくり人にぶつからないで歩こうと言う意識をもった子どもたちが各クラスのあちらこちらに観られました。
その子どもたちを観ていると、子どもたちは胸をはって
「見てて、私こんなにすてきでしょ」
と教師に訴えてきているようでした。(心の耳で聞きました)
制限のある動きを獲得した子どもの心に、自信が芽生えたのでしょう。
この歩くという1つの活動の中にさえ、身体的、精神的の両面の目的があります。
一般には生後1歳前後の頃から歩き始めた子どもたちを、
人間として当たり前の成長であると思ってしまいます。
しかし、直立歩行によって2本の手を自由に動かす事ができるようになった人間が、
物を扱う術を身に付け様々な文化を築いてきた歴史を考えると、
「歩く」という行為は人類の進化の上で、知性を身につける為の鍵であるともいえます。
援助者である教師はこれらの意味をしっかり心に留め、
環境の探検者として自由に歩く子どもたちが2本の手を使った運動を通して、
体と心を作る事ができるようお手伝いしていこうと考えています。

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